フィールド日記

アキイトスゲ
カヤツリグサ科
Carex kamagariensis K.Okamoto
2002年5月14日
愛媛県 岩城島




カヤツリグサ科のスゲ属を研究されているK氏の
今回のテーマは
昨日紹介したノスゲの自生地の確認とアキイトスゲの確認である。
そのため過去にアマチュアの研究者が標本を採集した瀬戸内海の岩城島に向かった。

岩城島は小さな島ではあるが海岸線を一周すれば10キロ近くはあろうか、
その島の中のどこかに目的のスゲが生えているわけだ。
どこにでもあるスゲがたくさん生えている中から
それを見つけ出すということなのだが
はたで見ている僕のほうが気が遠くなるようだった。

ちょっと進んではレンタカーを停めて
山の中に踏み入ってスゲの様子を一つ一つ高倍率のルーペで確認している姿を見て
ただただ脱帽するのみであった。

そうしたスリリングな密度の濃い時間の後
「これじゃないかなー」という声を聞いた。
そしてしばらくしてから「うん!これにまちがいない!」と言っている。
飛び上がって喜ぶ風ではない。

話を聞くと、他の種でこの種との関係が疑わしい種があり
標本を今後深く調べてこの2種の関係を見極めないと結論が出ないということだった。
一つの独立した種を、種として確認する作業の大変さを感じた。


翌日K氏(神奈川県立生命の星・地球博物館 学芸員 勝山輝男)より メールをいただきましたので転載します。
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とりあえずアキイトスゲで処理しますが,果胞の形,草姿などが似ているのでア
キイトスゲ=ゲンカイモエギスゲCarex genkaiensis Ohwiになる可能性がありま
す。
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このメールを拝見して思いましたが
研究者が、正式に認知されている二種類の植物を
ひょっとしたら同じものではないかということを
予想してその推理を証明していく過程はきっと
シャーロックホームズの気分ではないでしょうか。
5月15日記

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