フィールド日記

誰がつけたのだろうかカラスのタグ
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2003年12月10日


まだ咲いていたシコンノボタン


代々木公園の噴水池で
朝からカラスたちが水浴びをしていました。

‘からすのぎょうずい’というのは
ちょちょっと水を浴びるだけ
という意味で使われるようですが
見ていると彼らは
けっこう長い時間水浴びを楽しんでいるようです。


ハシブトガラスのぎょうずい

そのなかで
青い標識(タグ)を羽につけたカラスがいました。


タグをつけたカラス

時々こうしたタグをつけたカラスを見かけますが
どこでどんな目的で調査しているのかと思い
ネットで調べて見ますと
目黒の自然教育園のサイトにいきつきました。
そこには

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カラスの調査のお願い
自然教育園では
東京を中心としたカラスの調査をしています。
・・・中略・・・
タグの色
(今までに使用した色:白、緑、オレンジ、黄、青、赤)
タグの記号と番号
(A16などと。見えなければ結構です)
見た日時と場所
何をしていたか
(例:ゴミを食べていた)
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と書いてあるので写真を添付して
自然教育園にメールを出してみました。

[メールの抜粋]
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ウエブサイトで
ハシブトガラスの調査の事を知りましたので
ご連絡します。
・・・中略・・・
今朝9時30分ごろ
代々木公園の噴水のある池で水浴びをしていました。
タグは青で番号は見えませんでした。

他の色を見ることもありますが色わけの意味と
今日見たものは自然教育園でつけられたタグか
カラスにつけられた標識は
他の機関のものもあるのかを知りたく思っております。
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と、したためました。

するとすぐに
自然教育園から返事がきました。

それによると自然教育園でつけたタグではないそうで
調べてから再び連絡をくれるということでした。

      ・ ・ ・

ネットの検索ですぐに
タグをつける機関がわかり
そこに写真を添付して報告すると
次の展開が見えてくるのですから面白いですよね。

後日自然教育園からご連絡がきたら
続報としてお伝えします。

22:35 2003/12/10 記

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12月14日

自然教育園から再度メールがきました。

それによると あの写真のタグは東京大学で放鳥したものではないかということで
東京大学の連絡先を教えてくれました。

それで、
早速東京大学に問い合わせのメールを出しました。

22:57 2003/12/14 記

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12月15日

東京大学より回答のメールが到着しました。

[東大からの回答のメールの抜粋]
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東大でタグつきのカラスを放鳥していたのは2001年の春と冬です.
PHSを装着して追跡するさい目視追跡を並行して行っていたため,個体識別用に装着
していました.
ただし,残念ながら,お写真のタグと同色のタグは使用していません.
また,こちらで放鳥するさいには右足に環境省のメタルリングを,左足にカラーリン
グを装着していますが,お写真のカラスは足環をつけていないようです.
したがって,こちらで装着したものではないように思います.

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そういうわけで、このタグは
どこが何の目的でつけたのかまだわかりません。

とにかく、
自然教育園でも東京大学でもないことはわかりました。

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12月17日

その後、
自然教育園とのメールのやりとりが何度かありました。

そして、あのカラスのタグを装着したところはわかったのですが
結論から先に言うと
だいぶ以前、自然教育園がつけたタグだったそうです。

1999年、宮内庁に依頼し、皇居において
若干の固体につけたものの一羽だったようで
普通、それだけ時間が経過すると
死亡したり脱落してしまうそうで
想定外に長生きをしているカラス君だったようです。
(1999年から生存していたということがわかったのは貴重な情報だったそうです。)

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12月18日

昨日、このカラスのタグについては解決したのですが
最初に出した僕のメールの質問に対して
ご回答をいただきました

[最初に自然教育園に僕が出したメールの抜粋]
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他の色を見ることもありますが色わけの意味と
今日見たものは自然教育園でつけられたタグか
カラスにつけられた標識は
他の機関のものもあるのかを知りたく思っております。
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[自然教育園からの回答のメール]
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自然教育園でいろいろな色のタグを使っているのは、放鳥した年(ほぼイコー
ルその個体の生まれた年)を一目瞭然にするためです。カラスの捕獲・放鳥
は、繁殖が終わった秋から冬に主に行います。これは、
繁殖期に抱卵や育雛をしている個体を捕獲すると繁殖に悪影響を及ぼすか
らです。実際に秋から冬に捕まえてみると、ほとんどの個体はその年生まれで
す。その年生まれの幼鳥は口の中が赤く(成鳥は黒)、目の色が灰褐色(成鳥
は褐色)なのでわかります。幼鳥がよくつかまるのは、数が多いこととともに
幼鳥の方が捕獲オリに入ってしまいやすいためです。幼鳥には、例えば今年の
冬はオレンジのタグを使っています。稀に昨年以前生まれの個体が捕獲された
場合は、正確な年齢はわかりませんが、昨年生まれの鳥に使ったグリーンを
使っています(昨年は幼鳥にグリーンを使いました)。現在、タグには
「A12」などと記号や数字も印字しているのですが、そこまで見えないことも
よくあるので、生まれ年だけでも直ぐにわかるように色を使い分けています。

この調査の大きな目的は、行動圏と分散を調べることです。行動圏とは1日に
動き回る範囲です。どこでねぐらをとったカラスがどこでエサを食っているの
か、どれくらい広い範囲を動き回っているのかという基礎的な情報は生態を解
明する上で必須ですが、カラスではまだよくわかっていません。分散とは、幼
鳥が移動をして行って成鳥になったときどこに落ち着くかという移動のプロセ
スを指す用語です。カラスの分散は行動圏以上にいっそうわかっていません。
このようなことを明らかにするため、調査をし、観察情報を募っています。ま
た、標識を付けた個体が年々減っていくことから、死亡率や寿命を推定できる
可能性もあります。このことはタグが脱落することがあるため正確に知ること
は難しいのですが、充分な数の情報があれば、金属リングとタグの両方を付け
た個体の情報からタグの脱落率を推定して計算することができます。死亡率や
寿命の推定のためには、生まれ年が一目でわかるタグは有効です。
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終わり

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