フィールド日記
目覚める種たち
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2003年9月16日
7月22日のフィールド日記に載せた
我が家の近くの空き地に咲いていた
トマトダマシの花
7月22日のフィールド日記に
我が家の近くで見つけた
トマトダマシの花を紹介しましたが
今その20坪にもみたない空き地には
三階建ての木造の建物がだいぶ出来上がっていて
トマトダマシはなくなってしまいました。
三階建ての木造が建てられている
トマトダマシの咲いていたところの今の様子
帰化植物ですが
ほとんど見かけない珍しい植物です。
代々木の住宅地の真ん中の
古い家を取り壊した路地の空き地に
どこからやってきて
花を咲かせたのか不思議で仕方ありませんでした。
つい先日のことですが
関西で帰化植物を研究しておられるM氏が
ボクの事務所に遊びに来て下さった折に
そのことを話題にしました。
彼は神戸市内にお勤めで
面白いことにトマトダマシが
阪神淡路大震災の翌年
住宅が倒壊して更地になったところに
たくさん出て、花を咲かせていたそうなのです。
そうしたところにはイチビも咲いていたそうです。
思い出してみたら
代々木の空き地でもイチビが咲いておりました。
イチビも牧場周辺ではよく見られますが
都会ではほとんど見かけません。
M氏の推理は
トマトダマシもイチビも
長いこと種子が休眠する性質があって
発芽の条件がそろってきて
芽をだしたのではないかと言うのです。
すなわち、
上に建っていた古い建物がなくなり
太陽が照り、雨がふりそそぎ
目を覚ましたのではないかということです。
そうして考えていくと
北アメリカ、メキシコ西部原産のトマトダマシの種が
どこからやってきて日本の家の下の地面で
眠っていたかという疑問がわいてきます。
M氏の推理は
終戦後、
アメリカ軍の救援物資と一緒に
やってきたのではないだろうか
というわけなのです。
コムギなどの穀物の袋にくっついていて
戦後のバラックの台所で調理して
トマトダマシやイチビの種子は地面に落ち
その上に家を建て
50年後の今頃
地震で壊れたり
立替のために更地になってはじめて
芽を出したのではないかということです。
うーん!
とうなって
ボクはすごく納得できました。
神戸では震災の翌々年には
もうトマトダマシは見られなくなったそうです。
また、次のチャンスを目指して
種たちは長い眠りについているのかもしれませんね。
21:22 2003/09/16 記
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