------------------------------------------------------------------------


【陣場のトメさん】





日時:平成17年1月9日(日)
行程:高尾山口07:00〜高尾山08:00〜景信山9:30〜堂所山10:30〜陣場山12:00〜
    山頂の茶屋14:00〜陣場高原下15:00

足慣らしに高尾山方面に出掛けたのは、次週末に「山スキー行」が控えての事でもあった。
笹尾根の浅間峠までは、三頭山からトレース済みであったので、高尾山から陣場山・生藤山
(コースタイムは約10時間)方面に向かう尾根歩きに決めた。
しかし、年末に2度降雪があり、念のため「アイゼン=タニの10本歯」をザックに入れた。

早起きして、最寄り駅から始発電車に乗り、高尾山口に着いたのは、7時前だった。
都心のターミナル駅からは、週末朝帰りの若者達が大勢乗り込むが、この時間帯では登山者
が数名だけであり、しかも年配者である。
郊外になる程、例の若者達が減ってくる。
多摩川を渡る頃、黎明を迎える。
高尾駅で更に減り、終着駅では僅かであった。
1号路を上り、右の尾根が「モルゲンロート」で赤くなる。
薬王院や縁起物店の関係者が、ケーブルカーで通勤する時間でもあった。
山中の登山道が通勤の道となる。
山頂からは、富士山が見事であったが、朝日に光る東京湾も良かった。
大きなカメラを持った人に「日の出からですか?」と私。
「いや、間に合うように来たかったけれど。」と、おじさん。
着いた時は暑かったが、冷え込んで来る。
小さなポットにコーヒーを入れてきたので飲む。
日陰だと雪が残り、氷付いている。
けれどもアイゼンは、不要であった。
城山山頂は茶屋があるが、個人所有のようなので、何故か休む気がせず、先に進む。
小仏峠の標識で、「陣場山13km」とあったが、間違いではと思う。
景信山では、「朝食作り」のグループなどが、賑やかに楽しんでいた。
最近、山には珍しい若い子もいる。
小さな上りや下りがダラダラと続き、巻き道も続く、巾1〜2mの尾根道。
MTBが1台やってきた。
マラソンランナーもいる。
銀座通りである。道は広くないが…。
遠くから、陣場山頂が見え出す。
日当たりの良い所が、ぬかるんでいる。
やっと、陣場山。
2〜3回来た記憶がある。
100人くらいの年配者中心の登山者が、昼食している。
足慣らしで、5時間歩いたし、今日はここまでとした。
急に、ビールが呑みたくなる。
山頂直下の小屋で、珍しく大瓶があるので頼んだ。
600円であったが、なんと「アテ」(関西風な表現、酒のつまみ)が付くと言う。
「寒いから、中へ入ったら」と更にオバさん。
「来たばかりで暑いから、外で良いよ。」と、ビールと紙コップとアテを受け取る。
アテは、地元産の長い人参と昆布とスルメの和え物で、小皿一杯ある。
実に旨い。美味い。上手い。
富士と眺めながら、グイグイと呑む。
終着地と決めた安心感から、もっと呑みたくなった。
「焼酎か何かある?」と聞くと、「日本酒ならあるよ。」更に「中に入ったら。」とオバさん。
冷えたビールと寒風とで少し寒くなったので、誘われて中に入る。
「熱燗にする?」、するとインターホンで階下に頼んでいる。
400円を払うと、ワンカップと他のアテが来た。
今度は白菜漬で、小皿一杯である。
オバさんは忙しく働いており、登山者からの注文に答え、外のテーブルまで運んでいる。
誰にでも、「寒いから中に入れば。」と言い、あれが南アルプスとか金峰山と説明している。
中に入って来た単独行の若い女性には、何処から来たのとアレコレと聞いている。
中々の話好きであり、世話好きと観た。
仕事の合間に、世間話をする。
藤野の出で76歳、息子夫婦(嫁さんは都会の人)、孫2名(今日は風邪で休み)、旦那
(85歳、同じく休み)と3世代で、ここで営業しているとか。
次のアテは、大根の酢の物である。勿論、小皿一杯である。
その次も、「お袋の味」であった。
年配の常連達が来て、「トメさん」と言って、お土産を渡していた。
ビールに熱燗3杯とアテ4種類を頂き、ここらで腰を上げた。
持参した食料は、さほど減っていない。
満腹に近い。
気持ちの良い酔い心地であったが、慎重に下山する。
バス停までは、約1時間。
そのバスの中も、年配者で一杯であった。






------------------------------------------------------------------------

●Ishi紀行・目次に戻る