------------------------------------------------------------------------


【登山道のない山(容雅山)】








目的:山スキーで山頂からの滑降、2人はテレマークスキー、私はショートスキー
参加:Ni氏(自動車部品販売経営)、Ho氏(Ni氏の友人、50代半ば)、私
場所:頚城山塊、火打山の北東、容雅山(ヨウガサン 1498.5m)
日時:05年5月13日(金)21時出発〜14日(土)23時帰宅
行程:日本曹達第3発電所付近林道7:30〜合流点9:00〜北桑沢中間
   11:00〜山頂13:10〜合流点14:00〜駐車場16:30
   〜赤倉温泉大露天風呂17:30

GWの翌週末に、Ni氏からの誘いに乗り、Ni氏の友人Ho氏と、3名で行く事
にした。
行き先は、容雅山とか。
ハッキリ言って、知らなかった山であった。
容姿が優雅な山と、名の通りにピラミット状の美しい山であった。
容雅山は約1500mの標高だが、冬季に季節風の影響をまともに受け、大量の積
雪がある。
ここは、日本でも有数の豪雪地帯である。
アプローチに難があり、登山道が一切なく、4〜5月の残雪期しか入山できない。
この時期は谷が埋まり、沢筋を詰めれば、容易に山頂に行け、スキーで滑降できる。
登山者のいない、静かな山である。

上信道中郷ICで降り、林道最奥の駐車場に着いたのは、深夜1時を回っていた。
テントで小宴会後、就寝。
明け方、野鳥のさえずりで、6時過ぎにNi氏が目覚める。
私は、夜明けの4:40頃にトイレに起き、序に朝食用にと水を汲んでおいたが・・・。
15日、NHK7:45からの番組で、「戸隠高原の野鳥」をやっていた。
この辺りも、戸隠からほど近い広葉樹の森で、鳥の声も何種類も聞こえる。
汲んでおいた、残雪の融水を使い、玉子2個入りのさぬきうどんを作る。
山菜取りの車が、何台か来る。
三河ナンバーの50代の5人組は、賑やかであった。
朝方、別の場所での収穫が、ワゴン車に大きな袋2つくらい積んであった。
長靴や地下足袋姿の5人は、小さな鎌と大きな袋を持ち、フキノトウ中心に取ると
言う。
「近くの山でも、フキノトウはあるのでは?」と私。
「いやぁ、雪の下から出た奴は、色が違い黄色っぽくて、旨いのさ。」と、おっさん。
「この場所は、もう4〜5年来ている」とも。
別の4人は、もう収穫に飛び出している。

靴摺れ防止に、Ni氏は入念にテーピングしている。
この方法はテープが伸びるので、踵に「肉刺」ができないとか。
7時30分頃、出掛ける。
朝方、晴れていたが、だんだんガスが出てきた。
他の登山者はいない。
発電所の吊り橋を渡り、導水管沿いに登る。
1750m付近で導水管と分かれ、残雪に覆われた広葉樹の広い台地を暫く歩く。
北桑沢と済川の合流地点へ台地から下降する。
2人は、長いスキー板をザックに付けているので、木の枝などに引っかかり易い。
そこは、澄川の雪代で増水しており、簡単に対岸に渡る場所が見つからない。
浅い場所でも、腿から腰くらいの深さがあり、流れも速い。
冷たい雪融け水の上、ザイルもなく、ここで敗退か?
やっと探した方法である。
2本の長い倒木を大石間に渡し、左足をその倒木に掛け、勢いを付けて渡れば行けそ
うな案だ。
身の軽いNi氏が空身で、難なく渡り、スキーを付けたザックを対岸に移す。
3人の靴に少し水が入った程度で、大して濡れずに済んだ。
帰りまでに、倒木の橋が流れずにある事と、午後の増水でどうなるかであるが・・・。
北桑沢に入るが、口を開けた雪渓から、ゴォーとかなりの水量が流れている。
脇の雪面を転落しないように、登る。
滑り落ちれば、数メートル下の沢の中。
やがて、渓谷全面が雪で覆われるが、薄い雪面からは、微かにゴォーと聞こえる。
ブッシュがなく、歩き易い。
急な斜面では、キックステップして越える。
相変わらず、ガスが出て展望がない。
岩ほどの、ブロック雪崩の跡が、2箇所あった。
その上部には、今にも崩れ落ちそうな、雪の固まりも見える。
脇の小さな沢から、水を補給する。
谷が、北面に回りこみ、Ni氏の高度計で1000mを越えた所で、やや傾斜が緩くなる。
ここからが、頂上までの1枚バーンの雪面。
トップをNi氏から交代する。
傾斜が急になり、キックステップに力を入れ、後から来る2人に深い踏み跡をプレゼントする。
上部が見えず、右の尾根に向かい、トラバース気味に登る。
尾根に出るが、傾斜は変わらない。
20mほど、一番急な雪面になる。
ストックが突けないくらいの斜面で、胸の前で両手で突く。
今日の試練(核心部)の2つ目。
一つ目は、あの倒木の橋である。
越えると、今度は雪面に大きなクラックが先に見える。
大きく、右に迂回する。
傾斜が緩くなり、頂上となる。
相変わらず、周りはガスの中。
この中で、スキーで降りたくない。
晴れるのを祈る。
皆が、揃って昼ビールで乾杯。
2人は、350mlの缶ビール半分ずつで満足する。
今日の昼食は、シンプルにパン4個、バナナ、チョコレート、甘納豆である。
次第に、ガスが切れだした。
空が切れだし、青空が少し見える。
妙高山・火打山・不動山等の山頂と間の谷が、見え出した。
東側の信越方面と違い、べったり残雪が残り、迫力ある景色を堪能できた。
今年の山スキーの締めくくりに、天候も機嫌を直してくれた?
私は、ガスが切れだしたので、早めに斜面を滑降したかったが・・・。
出始めは、やや急な斜面だが、ザラメ雪で快適な滑りである。
平標山の出だしの方が、急であった。
Ho氏は、慎重に大斜面を大回りしている。
Ni氏と暫く、大斜面の下で待つ。
登って来た右側の狭い谷を降る。
段々になった残雪に足を取られながら、休憩を入れても合流点に、約1時間で降れた。
合流点の倒木橋は、幸運にも残っていたが、水量が増している。
水面から出ていた倒木の上面に、水流が被っている。
3つ目は、かなりの試練だった。
2本の倒木の1本がグラグラして、不安定だった。
大石間の流れの幅は、約2m以上はあり、こちら側は高低差で約1mは高い。
ヒョイヒョイと、Ni氏が対岸に渡り、2人の長いスキー板を受け渡しする。
私のザックには、ショートスキーと靴をくくり付けてあり、けっこう重い。
不安定な倒木に足を掛けている時、あっという間にその倒木が流されてしまった。
「しまった。」であるが、どうしようもできない。
Ni氏に私の重いザックを投げて、受け取ってもらった。
靴が外れないで、良かった。
2名のザックも投げる。
残った2人は、流れの間を一気に飛ぶしかない。
こちら側が高いので、飛ぶには有利である。
着地する石は水流を被っているが、幸運にも平らである。
「コケはなく滑らないか」と、Ni氏に確認する。
決断した私は、片手にストックを持ってさっさと飛んで、上手く着地できた。
問題は慎重なHo氏であり、心なしか顔が青ざめている。
中々決断できないようだ。
Ni氏と2人で、「大丈夫だから!」「思い切って!」「前の方で、石を蹴るよう
に!」と、励ます。
2本のストックは、落ちた時に引き上げるのに使えるので、敢えて持ってもらう。
但し、その事は言っていないが・・・。
その間30秒くらいか、やっとHo氏が飛んで、上手く着地できた。
疲れた後に、台地まで登り返しである。
剣の平蔵谷をグリセードで降った後の、剣沢の登り返しを思い出した。
行きと違う雪渓を登ったのが、間違いの始まりだった。
雪の重みで垂れ下がった木の枝と、藪こぎに手こずる。
腕を使った木登りもあり、全身くたくたとなる。
地図と高度計から、台地の100m上まで来てしまった。
雪のある場所を選んで、台地まで降りた。
4つ目の試練だった。
試練の多い山である。
赤倉温泉の大露天風呂800円で、たっぷりと汗を流す。
温めの大きな湯船と、熱めの小さな湯船がある。




 
中央が容雅山              ガスの切れ目から火打山








------------------------------------------------------------------------

●Ishi紀行・目次に戻る